I-PEX株式会社(本社:京都市下京区、代表取締役社長執行役員:小西 玲仁、以下 I-PEX)のグループ会社であるI-PEX Piezo Solutions株式会社(本社:山口県宇部市、代表取締役CEO:緒方 健治、以下 I-PEX Piezo Solutions)は、I-PEX Piezo Solutionsが提供するPt/ZrO₂バッファ層付きSi基板「KRYSTAL® Wafer」を活用し、強相関酸化物であるLaNiO₃薄膜をシリコン基板上に高品質に成長させ、電気的操作によって熱伝導率を可逆的に制御する技術を実現しました。
この研究結果をまとめた大阪大学との共著論文が、公益社団法人応用物理学会が刊行する科学学術雑誌『Applied Physics Express』(Vol. 19, No. 3, March 2026)に掲載されました。
「KRYSTAL® Wafer」上でのLaNiO₃薄膜の高品質成長。(a) 基板の構造。(b) 薄膜断面の電子顕微鏡画像(膜厚 約140 nm)。(c)(d) X線回折分析により、Si基板上でも単結晶基板に匹敵する高い結晶性でLaNiO₃が成長していることを確認。(論文より引用)
背景
熱伝導率を電気的に制御する技術は、熱トランジスタや次世代エレクトロニクスの熱マネジメントにおいて重要な基盤技術です。しかし従来、LaNiO₃などの強相関酸化物を高品質に成長させるには、LSATやYSZといった高価な単結晶基板が必要であり、産業応用にはコスト面や生産性の面で大きな課題がありました。
技術実現の概要
本研究では、「KRYSTAL® Wafer」のPt/ZrO₂バッファ層を用いることで、一般的なSi基板上でもLaNiO₃をエピタキシャル成長させることに成功しました。その結晶性は単結晶基板に匹敵するレベルに達しており、従来Si基板では期待されていなかった高い熱スイッチング性能が達成されたことを実験的に確認しています。
本技術の主な特長
- Si基板上での高品質エピタキシャル成長:高価な単結晶基板を使用せず、半導体産業の標準基盤であるSi基板上でLaNiO₃薄膜の高品質成長を実現
- 熱伝導率の可逆的制御:電気的操作により熱伝導率をオン・オフでき、いわば「熱のトランジスタ」として動作
- 単結晶基板に匹敵する結晶性:「KRYSTAL® Wafer」の優れたエピタキシャル成長環境により、従来は高価な基板でしか得られなかった性能を Si 基板上で発揮
- 量産化・実用化への高い適合性:既存の半導体製造プロセスへの組み込みが可能であり、コスト削減と量産性の観点から大きなビジネス価値を有する
I-PEX Piezo Solutions株式会社について
I-PEX Piezo Solutions株式会社は、I-PEXグループの圧電MEMS加工部門を独立し、優れた単結晶圧電薄膜の成膜技術と融合する事で、高性能な圧電薄膜の成膜と圧電MEMSの加工技術を持つ、独立系圧電MEMSファウンドリとして設立されました。