環境先進工場としての挑戦:I-PEX (Thailand) Co., Ltd.(タイ・チョンブリ工場)の循環型ものづくり

タイ工業団地公社からの「I-EA-T Circular Economy Pride Award」の受賞式 タイ工業団地公社からの「I-EA-T Circular Economy Pride Award」の受賞式

2000年の設立以来、I-PEX (Thailand) Co., Ltd.(タイ・チョンブリ工場)は、ハードディスクドライブ(HDD)部品や自動車向け精密成形品の製造を通じて、高い信頼を築いてきました。

しかし、私たちが目指すのは「ものづくりソリューションエキスパート」としての価値だけではありません。タイ・チョンブリ工場は、サステナビリティに向けた先進的な取り組みでも、注目を集めています。

 

2024年11月、タイ・チョンブリ工場は、工場が位置するアマタ工業団地の「アマタ最優秀廃棄物処理賞(プラチナレベル)」を2年連続で受賞しました。また、2025年にはタイ工業団地公社から「I-EA-T Circular Economy Pride Award」を受賞しています。こうした成果は単なる業務上の成果ではなく、持続可能な未来づくりへのコミットメントの証です。

3R(リデュース・リユース・リサイクル)による循環型イノベーションの推進

有害廃棄物処理業者の現場監査 有害廃棄物処理業者の現場監査
一般廃棄物処理業者へのデスク監査 一般廃棄物処理業者へのデスク監査

タイ・チョンブリ工場では、サステナビリティを生産の根幹に位置づけています。樹脂やプラスチック成形を取り扱うメーカーとして、私たちは素材の特性を理解しそれに伴う責任を果たすために、廃棄物管理戦略の基礎として「3R」の原則(リデュース・リユース・リサイクル)を徹底的に追求しています。

 

3R戦略は廃棄物の発生源である生産工程の最適化から始まります。ランナーやトレーなども回収・粉砕し、新たな原材料(バージン材)と混合することで、素材の循環的な活用を促進しています。持続可能な資源管理と製造技術の革新の推進により、産業廃棄物と原材料の使用量の削減を同時に実現しています。

私たちの戦略は、削減と再利用にとどまりません。強固なリサイクル・プログラムと廃棄物処理業者の厳格な監督により、2022年以降は埋立廃棄ゼロを継続中です。すべての産業廃棄物を再使用・再資源化する体制を整え、循環型経済への貢献を進めています。

水資源への責任:持続可能な水管理への取り組み

I-PEX (Thailand) Co., Ltd.(タイ・チョンブリ工場)の製品量産の流れと環境への取り組み I-PEX (Thailand) Co., Ltd.(タイ・チョンブリ工場)の製品量産の流れと環境への取り組み

持続可能な水管理への取り組み(ウォーター・スチュワードシップ)は、自社の敷地内だけでなく、流域全体ですべてのステークホルダーとともに水資源を管理し、持続可能な水利用を促進する取り組みのことです。

私たちは、責任ある製造とは、地球上で最も重要な資源のひとつである水を保護することであると信じています。なかでも東南アジア地域においては、水資源の不足や汚染は重要な課題であり、水資源の利用を減らす一方で水資源からの効果を最大化する必要があると考えました。

タイ・チョンブリ工場で製造するHDD向け機構部品は、表面の微細な不純物を取り除き高精度な部品を確保するために、年間約18,000トンの純水を使う精密洗浄工程が必要です。この工程で使用する純水を水道水から作る純水製造設備において、不純物を含む排水が発生します。

私たちはこの精密洗浄工程における水資源への影響を認識し、対策に取り組みました。

タイ・チョンブリ工場では、2020年より逆浸透膜(RO)による水再利用システムを導入し、純水製造設備の排水を再利用する取り組みを開始しました。

導入当初は、水質基準の維持や導電率の管理に課題がありました。しかし、サプライヤーとの連携やタイ・チョンブリ工場のチームによる創意工夫により、これらの課題を克服していきました。その結果、構築した水再利用システムによって、2024年には排水の約60%を再利用し、総水使用量を15%削減することができました。

今後は「排水ゼロ」を目指す“完全循環型”の水使用モデルの実現に向けて、さらなる革新に挑戦しています。

I-PEXグループの逆浸透膜(RO)による水再利用システムについて

逆浸透膜(RO)による水再利用システムは、I-PEX Singapore Pte Ltd(シンガポール工場)での取り組みをきっかけとして、I-PEXグループで展開しています。

シンガポール工場での取り組みについては、以下の記事をご覧ください。

工場の排水を“資源”に変える:アクアポニックス・グリーンファーム構想

タイ・チョンブリ工場の排水で野菜と魚を育てる「アクアポニックス・グリーンファーム」 工場の排水で野菜と魚を育てる「アクアポニックス・グリーンファーム」

タイ・チョンブリ工場では、環境配慮を遵守すべき義務として捉えるだけでなく、持続可能な水管理への取り組みを一歩前進させる新たな挑戦も行っています。

それは、2023年にスタートした「アクアポニックス・グリーンファーム構想」です。

 

この取り組みは、製造工程で再生処理された水の最終段階の排水を活用し、魚と野菜を同時に育てる循環型の農業システムです。排水を副産物ではなく、再生可能な資源と捉える新たな挑戦です。

グリーンファームで育てた魚や野菜は、従業員への福利厚生として配布し、同時に環境教育の一環としての役割も担っています。こうした取り組みを通じて、工場全体の環境意識の醸成を図っています。

アクアポニックス・グリーンファームにより、私たちは水の100%リサイクルの実現という目標へ向けてさらに一歩前進するとともに、持続可能な製造業が再生可能で、革新性があり、社員や地域の住民の暮らしや幸福を重視したものであることを示しています。

「アマタ最優秀廃棄物処理賞(プラチナ)」を2年連続で受賞:成果を土台に、次なる革新へ

アマタ最優秀廃棄物処理賞の受賞式 アマタ最優秀廃棄物処理賞の受賞式

こうしたタイ・チョンブリ工場における水の再利用に関する取り組みは、タイで高く評価されています。

工場が位置するアマタ工業団地から、2023年~2024年の2年連続で「アマタ最優秀廃棄物処理賞(プラチナ)」を受賞。またタイ工業団地公社から、2025年に「I-EA-T Circular Economy Pride Award」を受賞しています。

これらの賞は、産業廃棄物の管理や環境への意識、持続可能な事業の推進において優れた企業に贈られるものです。タイ・チョンブリ工場の、地域とともに歩む環境先進企業としての誇りを支える成果です。

 

タイ・チョンブリ工場は、サステナビリティを目標ではなく責任として捉えています。

今後もリサイクル材料の活用促進や新技術の導入を進め、環境と共生しながら価値を創出するものづくりを追求していきます。すべてのステークホルダーとともに、より強く、よりやさしい未来を築いていきます。

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